特別養護老人ホーム 緑風園
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バイステックの7原則を簡単にまとめて見ました。 (特別養護老人ホーム緑風園・施設長 菊地  雅洋)

ただしこれはあくまで要点のみです。実際に現場で援助技術として活用する際は、ケースワークの原則などの著書で詳細をしっかり把握して用いてください。生半可な知識のみで現場で活用することは極めて大きな問題を引き起こす可能性があります。

@  個別化の原則

利用者を「寝たきりの高齢者のケース」「認知症のある高齢者のケース」「独居のケース」という捉えかたではなく、それぞれ別の性格や人格、生活暦を持つAさんBさん、として捉えること。問題に直面しているのはあくまで「個人」であり、ある層や群ではないのです。ですから解決やアプローチの方法も個人に合わせて行われる必要があるのです。

つまり利用者は「不特定多数の中の一人」ではなく「特定の一人の人間」として対応されるべきであるという人間の権利に基づいた原則です。

私たち自身も自分を「個」として他人とは違うんだと意識しているはずです。そのことを他者にも理解してもらわないと援助者を信頼して相談できないのです。

A   自己決定の原則

ただ単に利用者や家族の意向だけで物事を決定するということではありません。決定の主人公は本人であるということが大事で、例えば介護保険の制度利用を例に挙げれば、専門知識のあるケアマネが利用者や家族に、介護サービス利用の効果(成果)や、利用者の今後の状況変化の予測等の専門家としての判断を分かり易く説明(情報提供)した上で、最終的に決定するのが利用者であるということだと思います。

ただし自己決定には市民法や道徳法、機関の機能や個人の能力による制限が伴います。自らの命や他者の命を危険にするような自己決定は認められないし、あらゆる手立てを講じても自己決定ができない利用者については援助者が彼らに代わってニーズを表明し、方法を選択し意思決定を代弁することによって利用者の基本的人権を守ろうとするものです。

例えば、生活保護のワーカーが認知症の症状が出始めた独居の高齢者宅に訪問した際、高熱で起き上がれない状態であり救急車を呼ぼうとしたが、利用者本人が「病院には用はない」と言ったため、それが自己決定であるとして、そのまま役所に戻り何の対応もしなかった、という状態は援助における自己決定の尊重には該当しません。

参照:自己決定とは何か1〜バイステックの7原則を都合よく解釈してはならない
参照:自己決定とは何か2〜ケアプランへの希望とニーズの温度差

B    受容の原則

利用者の長所と短所、好感の持てる態度ともてない態度、肯定的感情と否定的感情、建設的態度や行動と破壊的態度や行動などを含んで、あるがままの利用者を受け入れようという態度です。利用者の表面的な態度の原因である考え方や事情に道徳的批判を加えず受け入れることが援助の入り口になるという意味です。こうあってほしいという姿とはかけ離れているとしても、それを利用者のありのままの一部、として受け入れることです。

ただし例えば逸脱した行為を示す利用者を受け入れるということは、決してその逸脱に同調し許容するということではありません。参照:受容とは何か〜許容ではない、という意味。

つまり彼らの行動を真実ないし良いものとして許容することではないのです。彼らを受け止める際に、そのような行動を彼らの現実の一部として認識し理解する、という意味です。つまり「受け止める」ことと「許容」することは違うのです。そして受け止める対象は「現実」であるのです。この現実を受け止められないとケースワーカーは非現実的で見せかけだけの状況を作り出す恐れがあります。例えば、医師が患者の健康状態に関するあらゆる状況をそれが患者や家族にとって不幸な結果である場合にも現実として受け止める状態と同じです。

援助者が利用者自身を受け止めることによって、利用者は援助者を信頼でき自由に意見や感情を出せるようになるのです。

C   非審判的態度の原則

援助者はどのような観点からであっても利用者を裁いてはならないという原則です。

援助者は法や道徳の審判者ではなく利用者の理解者でなければならないという意味です。

しかしこのことも例えば利用者が犯罪を犯した場合もそのことまでも受容し、その行為の善悪を判断してはいけないとか、そのことに無関心でいなければならないとかという意味ではありません。

行われた犯罪は「行為」でありその「行為」については善悪を判断する必要があっても、それはその行為を行った人を援助するために必要な判断であり、人を裁くために判断するのではないということです。

利用者の
「行為」そのものについては援助者は客観的に評価・判断を加えるが、利用者自身については審判することなく受け入れ理解する必要があるということです。利用者は援助者から審判される恐れを感じているうちは否定的な感情などを自由に表現できず問題解決に結びつかないのです。

例えば、介護保険サービスの現場では「息子だから親の面倒をみなければならない」と断ずること自体も非審判的態度の原則に反しており、そのことにより適切な援助関係が構築できず問題解決が図れないことがよくあります。

D   秘密保持の原則

援助者は利用者の人間生活そのものに密接に接触するため利用者のプライバシーや家族に関する情報を見聞きします。当然のことながら、これは倫理的義務としても秘密として守られなければ利用者は信頼して全ての感情や気持ちを伝えることができなくなります。

 

また、特定ができなくとも例えば、雑談で必要のない時にでも援助者が「〜こんなことがあってね」と話しているのを聞いて、それが自分自身や自分の家族が介護サービスを利用している場合の話であると想定した場合、いやな気持ちにならない人はいないでしょう。

E   統制された情緒関与の原則

この原則は実践するのも説明するのも大変難しいんですが、援助者は自分の感受性を働かせて利用者の観察等を通じて利用者の言動の裏に潜んでいる感情を理解し、その感情に適切に反応することで利用者に心理的指示を与えることができるというものです。

言葉だけでなく態度でもそれを表す場合があり、表面的だけでなく心の底から共感して反応することが大事だといわれています。「あなたの気持ちはよくわかります」「きっとつらいよね」という言葉は、それが援助者の気持ちをきちんと通過したものでなければ効果はない、と言われています。やっぱり難しいですね。

また、このことは援助者が自分の感情を自覚することと密接に関わっており「自己覚知」参照:面接の技法2〜自己覚知についての理解なしではできないことと考えています。

F    意図的な感情表現の原則

利用者が自己の感情を自由に気がねなく自由に表現できるように、意図的に援助者が関わるということです。

具体的には

1.     利用者が利用者なりのやり方で話ができること、

2.     援助者が利用者の感情を重視していること

3.     利用者が感情を表現しても援助者が不愉快な反応を返さないこと

4.     援助者が利用者の感情を安易に、または非現実的に解釈しないこと

5.     援助者が利用者の否定的感情を一方的に非難しないこと

というようなことが考えられます。利用者の援助者に対する信頼と安心感も重要な要素ですね。そのためにも傾聴の態度は不可欠であり参照:面接の技法〜傾聴の意味。、援助者は利用者の声なき声も含めて、しっかり聞こうとすることが大事です。

ただ、この原則は単に感情表現を助ける、ということのみならず、感情表現を制限する場合も含まれます。つまり援助過程の初期段階などで利用者が未成熟のまま深い心理的感情を表出してしまうと不健康で不必要な罪悪感を残してしまう場合などがあり援助関係に混乱をもたらしたりする場合もあります。そのような場合を除いては利用者が自己の感情を気楽に表現できる許容的雰囲気、環境が求められます。

(付録)
バイスティックの7原則を居宅介護支援に当てはめると(1)
バイスティックの7原則を居宅介護支援に当てはめると(2)

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