特別養護老人ホーム 緑風園
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施設ケアマネージャーの業務のあり方についての一考察
                      業務課長(社会福祉士)兼ケアマネージャー(当時:現施設長) 菊地  雅洋
(はじめに)


介護保険施設のケアマネージャーについては他職種との兼務も多いと考えられ、その兼務職種によって個々の業務内容はかなり違いが出てくるということが考えられるが、利用者の介護計画を管理する施設内のケアマネジメントのあり方を考える上では、その一連の考え方はきわめて近いものになり得ると考えられ、ここでは施設のケアマネジャーという立場に視点を当てながら、他職種との連携も含め、ケアマネジメントをどのように展開させていくべきか、その作業の基本的な流れを考えてみたい。
(もちろんここで提言する内容は当施設の実践がベースになっており、すべての施設ケアマネージャーに当てはまるとは限らないことを付記しておきたい)

(1.入退所に関する業務とケアプランの関係)

入所の受け入れ業務は、ケアマネが担当しているとは限らず、相談員等が受け入れ窓口として主業務を行っている場合も多いが、新規入所者を受け入れる過程において、インテーク(入所前面接)が行われであろうと思え、この際は、インテーク担当者がケアマネではなくとも、必ずケアマネもこれに同行し、入所希望者の状況や希望などを直接確認しておくことが望ましく、この際に家族状況や入所前の居住場所の確認、生活習慣の確認等を行っておくことが望ましい。

なお最初のケアプランの作成は、この段階での作成は困難であり、施設に入所して一定期間の生活状況を把握した上で策定されることが望ましい。(実際の生活上の課題がインテークのみでは確認できないことも多いし、環境への適応のアセスメントは必要不可欠である)、この期間については入所後、概ね1週間〜2週間をめどとすることが望ましいと思える。

この際の基礎情報はインテークでケアマネが確認した情報となろうが、実際の入所後における生活状況等は、担当の介護職員等が情報収集の役割を担当するなどの「役割分担」を行いながら、適切かつ正確な情報把握に努めアセスメントを完成させる必要がある。

この役割分担等については後の項で述べるが、ケアマネージャーは、新規入所者の入所期日が決まった時点で、あらかじめ第1回のケアカンファレンスの開催日程を決めておき、役割分担に基づいて各職種にアセスメント情報等のコンピューターへの入力などの〆切期日等を通知し、ケアカンファレンスに向けた準備作業を行っておく必要がある。(ケアカンファレンスの具体的準備の手順等については別項:施設介護計画の作成、で述べる)

退所の際で、在宅復帰あるいは他施設への転入所(医療機関を含む)の場合は、居宅介護支援事業所の紹介、必要な機関への入所中の生活情報等の提供を(利用者同意に基づく)適切な方法で行う必要がある。なおこれらの引継ぎ作業も、必ずしもケアマネが主として担当しているとは限らないが、相談員や看護婦等が行う場合でも、ケアマネージャーとして必要と判断する情報等の伝達については他職種と連携しながら行う必要がある。

なおこの際、算定条件に合えば、退所時等相談援助加算として介護老人福祉施設が算定できる費用は
1.退所前後訪問相談援助加算
2.退所時相談援助加算
3.退所前連携加算

であり、これらの条件を満たした援助を行った場合、利用者に充分その内容を説明するとともに、請求担当者にその旨を伝える必要があり、この把握も施設のケアマネージャーが行わねばならない業務と考えられる。

(※なお、介護老人保健施設の場合は退所時等相談援助加算として算定できるのは、
1.退所前後訪問指導加算
2.退所時指導加算
3.退所時情報提供加算
4.退所前連携加算   の4項目である。なおその関連としては退所時加算の算定について を参照されたい )

(2.施設介護計画の作成)

T.ケアカンファレンスの事前準備と進行について

施設介護計画はケアマネージャーが作成することになっているが、これは施設のケアマネージャーが施設介護計画の作成作業をすべて単独作業で行うことを意味したものではない。施設介護計画はケアマネージャーが行うケアマネジメントを中心にケアカンファレンスでの話し合いにおいて策定されるものであり、その過程では施設の全職種が連携しながら共同作業で必要な情報を収集し、適切なアセスメントを行うという視点が重要になる。

ケアマネージャーはあらかじめ、全入所者の介護認定期間を把握しておくとともに、その認定期間にあわせて定期的に(最低一人につき年2回:半年毎)にケアカンファレンスを開催する。

なお老人保健施設の場合は3月に一度、在宅復帰検討を行う必要があり、これがケアプランの更新とリンクされて考えられるところから、この時期に合わせてプラン作成(3月ごと年4回)を行うことが通常考えられる。
(注)ケアプランの作成は必ずしも認定期間にあわせなければならないものではないが状態変化がない限り、認定期間を基準として半年毎の計画を立てることが合理的方法と考えられる(施設の実情にあわせてこの時期設定は変えてもかまわない)


カンファレンスの日程は施設内の勤務状況にあわせて、できるだけ多職種が参加できる日程を組むべきであるが、全職員が参加する必要はなく、相談員・看護師・介護職員・栄養士等の必要な職員が参加できる日程を調整し事前に計画し、全職種に周知し、作業日程を組んでおく必要がある。この際、役割分担として、担当介護職員等が生活状況等のアセスメントの収集を行う場合もあろうし、場合によっては介護計画の素案作りまで担当介護職員が行い、ケアカンファレンスでその素案をたたき台にして最終的な介護計画を立案する場合もあろう。しかし施設のケアマネージャーはその過程において、各職種から寄せられた情報内容について実際の利用者の状況を面接により確認しておくことは重要な作業であり、必要不可欠である。

それらのアセスメント情報がそろった時点で、ケアマネージャーはカンファレンスの進行をスムースに行えるよう事前に必要書類をそろえ、各職種に配布しておく必要がある。たとえば課題分析表や問題領域の一覧表などが資料として考えられるが、通常2回目以降のプランの作成に関しては、前回プランの評価も必要な視点であることから、モニタリング表を事前に作成しておき、カンファレンスに資料として提出できれば、カンファレンスの大幅な時間短縮が期待できる。(このことは次項:モニタリングについてで述べる)モニタリング表の作成も、担当介護職員や看護職員等から情報を得なければならないが、ケアマネージャーとしてこれを作成するのはきわめて重要な作業として捉えておく必要があろう。

(当施設ではケアカンファレンスは水曜と木曜に設定し、家族情報等はケアマネージャーが、生活情報は担当介護職員がケアカンファレンスの行われる週の月曜朝までコンピューターソフトに入力する。ケアマネージャーはケアカンファレンスの行われる週の火曜までに入力された情報から必要な内容をチェックし担当介護職職員等に必要な情報を確認しながら事前資料としてモニタリング表とMDSの領域検討用紙をまとめ会議資料として各職種に配布している。)

このような事前準備を経て、実際のカンファレンスが開催されることになるが、カンファレンスの議事進行はケアマネージャーが務め、各職種から必要な意見を引き出しまとめることが重要になる。この際、家族や本人の参加も考えられるが(参照:ケアカンファレンスへの本人の参加)参加されない場合には、日常の生活場面やさまざまな機会から利用者の希望を探り、それをプランに反映するべきである。しかし実際に利用者の隠されたニーズも含めて、ケアに対する希望をケアマネ一人ですべてを把握するのは不可能であり、職員全体として何が利用者にとって必要なのかという観点を持ってケアサービスに従事し、その中で得た情報や意見をケアカンファレンスに反映する必要があり、それがカンファレンス参加者全員で持つべき意識であろうと考えられる。また2回目以降のケアカンファレンスにおいては次項で述べるモニタリングの視点からサービスの提供結果を考証しながら新たなプランの作成を、介護サービスの評価と結びつけて考えるべきである。この際モニタリング表は事前資料として提出されていると思えるが、話し合いの中でモニタリング表の内容、評価等に修正点がある場合があり、このことも同時に話し合うことで、より適切なプラン作成に結びつくものと考えられる。(なぜそういう評価がされたかという点が、まさに介護サービスそのものの評価と結びつくからである)

U.モニタリングについて(その目的と視点)

施設介護計画は定期的に繰り返し作成されるものであるが、通常2回目以後の計画作成の際に重要な要素となるのがモニタリングであり、ここではその目的と視点に立った作業内容を考えてみたい。


まず何のためにモニタリングを行うかというだが、ひとつに道しるべの役割がある。Aさんという利用者に、このような目標を立て、このようなサービス提供を行った結果、Aさんは、このような変化があった、とか、なかったとか、あるいはこのような問題点が抽出されたとか、されなかったとか、またそのことにより次回以降はこのようなサービス提供が考えられるとか、あるいは現状のサービス提供を継続することで充分ではないかといった、具体的サービスを導き出す為の指針となり得るものでなければならない。

次に、利用者の満足度についてきちんと評価する視点が重要となる。

ところで満足度を図る前提として、本人の希望の確認ということが必要になってくるわけだが、ここでもカンファレンスへの本人参加という問題が出てくる。しかし私自身は本人参加が絶対条件であるとは思っていない。(参照:ケアカンファレンスへの本人の参加

ある方のケアプランを作成する場合、カンファレンスの場では、かなりシビアに病状とか、身体状況の確認が必要になる場合があり、また羞恥心のケアに関する部分も多くなってくる。これらの場合、本人がいることによって言葉をオブラートに包んで話し合い、真意が伝わらなかったり、十分話し合えなかったりする場合があり得る。
我々は普段利用者と接する中で日常の中で、利用者の気持ちや希望を推し量るソーシャルワークの役割が当然あるわけで、また利用者の気持ちを代弁するアボドケーションの視点も持ち合わせていなければならない。ことさらカンファレンスの中だけで本人参加をもって発言してもらって希望を聞く、のではなく日常生活の中で利用者の希望を図っていく視点があってよいと考える。
特にケアプランには同意を得るという作業が不可欠なわけで、そこで希望の確認は充分取れるわけで、プラン策定の過程の説明は充分可能であり、必ずカンファレンスに本人や家族参加を条件にするという考えを私自身は持ってはいない。サービス計画策定の一連の流れに本人や家族の意向が反映されないのが問題なので、カンファレンス自体に参加しないからといって、一連のプラン策定作業に意向が反映されれば問題ないと考え、このあたりは教科書とは考えの違うところである。もちろん希望する人の参加を拒むという意味ではないことは当然である。

本題に戻るが、介護サービス提供がおこなわれた結果、利用者の満足度について、意向はどうなったか、感情がどう揺れ動いたか。などについてきちんと評価を行ったうえでプランの再作成を行うべきであり、このことをケアマネージャーは十分意識として持っているべきである。

また今まで行われたサービスがどのように実施され、その導き出された結果を計測することは、次のサービス実施が、今後利用者にどのような効果をもたらし、どのような結果が得られるかという、今後のケアの予後の推察が容易になるというメリットがある。そのことによりより的確なサービス計画の作成につながる可能性が高まるのである。

このようにモニタリングを行うことは、実は次のサービスプラン作成に直結していくものであり、事前にモニタリング情報をしっかりそろえ、参加者がそれを理解していることは、カンファレンス自体の時間短縮につながるものと思える。ケアスタッフはやはり現場で、利用者と直接接してケアを提供していく場面が最も必要な援助であり、カンファレンスの時間短縮という視点もケアの品質向上には欠かせない視点のひとつなのだ。

しかしモニタリングには2つの点で難しさがある。

まず第1に、介護サービスの特性それ自体の難しさである。つまり介護サービス利用は実際に試すことができず、利用そのものになってしまい、例えば『今日は明日の分まで排尿介助しておきます』なんてことが絶対できないということ。また人間の行為そのもので、時間をとめることができないし、過去の行為を全く同じに繰り返せない、再現性がないという難しさがある。

それから評価の手法や基準が確立されていない為、仮に外部の第3者機関に評価してもらっても『総論賛成、各論反対』という状況が生れやすい。
それは何故かというと、介護サービスに絶対はない、ということであり、その理由は専門性や立場の違い、利用者自身の意向の揺れ動き、時間の変化、そして最終的には個人の価値観や人生観の違いが評価に影響してしまうからだ。

そこで発想を全く変える必要がある。つまり、サービスを提供する側は、介護サービスの『適切さ』より『不適切さ』を考えてみるとわかりやすい。
利用者にとっても、『適切はどうか』という判断は主観的にも難しいけれど、『不適切か』ということは、つまりは『望ましくない』ことは、判断するというより『嫌だ』という感情となって認識できるので容易になる。

そして『不適切な介護サービス』を提供しない為には『提供されない環境作り』が最も重要になってくる。『提供しない』ではなく『提供されない』環境がポイントでとなるのである。
不適切な介護サービスが提供されない環境とは、提供者の意識や倫理観の高められる『働きやすい職場作り』が必要で、経営者の努力は当然だが、提供者自信も、仲間作り、ストレスの発散、自己達成といった自助努力が必要だし、さらに提供者の資質向上が絶対条件で、体系的で継続的な研修が必要となる。このことは施設全体としてその体制を整えていかねばならず、ケアマネージャーも研修計画に参画することが望ましいと考えられる。

それからアフターフォローの重要性だが、前述したように、介護だけでなく形のない全てのサービスは、『利用してみなければ分からない』『別なサービスと比較しなければ分からない』のだから、介護サービス利用後の利用者の状況の確認ということは最も重要である。気づいたときでなく、継続的に行うことが必要だ。それがモニタリングの意味の一つでもある。

それから、利用者がクレームを言えない状況、諦めてしまう状況は絶対防がねばならない。利用者が自由に希望やクレームなどが言える状況かどうか常に自問自答する環境でなければならない。またクレームや何か問題が生じた場合、『あの人の対応が悪い』とか『この職員人数では無理』という発想ではなく、業務のチェック体制の改善の方向で考えなければ根本的か解決にはならない。
つまり解決しなければならないのは人ではなく、プロセスや仕組みである点がモニタリングの重要な視点なのである。


これらを考慮したうえで、新たなプランを作成する際は、その内容(ケアの実施状況、評価、利用者の要望や意見等)をモニタリング表にあらかじめまとめておき、ケアカンファレンスの資料とし事前に各職種に配布しておくことが望ましい。モニタリング表の作成はケアマネージャーが担当介護職員と協働で行う方法が望ましいと思える。なおモニタリングの評価内容についてもケアカンファレンスで検討し、その内容は変更される可能性があることも申し添えておく。

※この項については参考として、当サイトとリンクしている「ケアプランの広場」のケアプラン専門講座を参照し、一部を引用させていただきました。

V.ケアカンファレンスの結果のまとめと関係職員への通知、プランの同意、書式の保管について


ケアカンファレンスでは課題から目標の設定、具体的ケアサービスの方法を話し合うことになるが、サービス計画表に記載する文言をすべてカンファレンスで1言1句作成することは不可能である。具体的ケアサービスの内容が策定された時点でケアカンファレンスとしては作業を終了し、これらの書式は事後にケアマネが話し合われた内容を元に、施設内のルーティンワークとも関連付けながら作業する過程で、サービス計画書1.2.3をまとめることとなる。この作業は、ケアプランの原案の最終確認という意味合いもあり、ケアマネが自ら行うことが望ましく、仮に他者がこの作業を行った場合でも、最終的にケアマネージャーは、その内容につき確認を怠ってはならない。

また同時に、この際、介護評価と絡めて、話し合われた内容から事前に資料提出したモニタリング表に修正が必要な場合、同時にこれを行い、最終的に完成されたモニタリング表は、新たなサービス計画書1.2.3とともに綴り、利用者または家族に同意を得る際の説明資料としても、これを用いる。計画の同意を求める連絡と、計画の説明、サービス計画書の写しの交付、同意書への署名、などはケアマネージャーの重要な役割となろう。ただケアマネージャーが不在時に家族等が同意のため施設に訪れる際には、その内容を十分説明可能なソーシャルワーカー等に代行して業務を行ってもらうことは可能であると考えられる。

さらにケアカンファレンスの記録について「会議結果報告書」という書式としてまとめ、施設長等の決済を得ることが必要であり、これもケアマネジャーのルーティンワークとして位置づけられるものと考えられる。この結果報告書はケアマネが管理保管しておく必要があるだろう。

さてこうして完成された書式のうち、特にサービス計画書2が具体的ケアサービスの内容であり実際のケアサービスに関わる職種はこの内容を確認する必要があり、また目標も知っておく必要があるため、最低でもサービス計画書1.2は各部署に文書として配布し、常時確認できる体制をとるべきである。またサービス計画書1.2.3とモニタリング表の原本は、施設介護経過(支援経過)としてサービス提供記録を記載する綴りにまとめておくという方法がある。こうすることによりサービスの実際の内容、記録がケアプランやその目標に沿った記述にしやすいというメリットがある。

なお施設介護経過(支援経過)についてはケアマネがそれを一人で担当し記録することは不可能であり、むしろこれは介護保険施設では利用者の担当介護職員がその担当になり記録することが自然で適当となろう。支援経過の記録については定期的に施設長の決済が必要となるが、この際にはケアマネージャーも記録内容の確認を行い、記録に不備や指導点がある場合、記録者への適切な指導を行うことも必要である。

まとめてみると、このようにカンファレンスの日程を立てた際、ケアマネが事前準備し各職種に渡す資料として、
1.モニタリング表(2回目以降)
2.問題領域や課題がわかる資料(使っているアセスメントツールによる検討内容)、が考えられ、

カンファレンス終了後に作成する書式として、
1.アセスメントツールの課題分析状況をまとめたもの(例えばMDSの場合、領域選定表、領域検討用紙)
2.サービス計画書1.2.3
3.モニタリング表の修正が必要な場合は最終的に修正したもの
4.会議結果報告書
5.ケアプランの同意書

が考えられる。また随時記録するものは
1.施設介護経過(支援経過)

がある。

W.施設介護経過(支援経過)の記録の仕方について

上記で述べたように施設介護経過の記録については、担当の介護職員が記録し、一定期間(当施設では2ケ月)ごとに決済処理をするのが望ましい。ケアマネージャーはこの記録の意味や目的を担当職員に周知し、必要な指導を行うとともにケアの参考資料等に積極的に活用するように取り組むべきである(この記録自体もカンファレンスの資料やモニタリングの際の資料になることは言うまでもない)特にケアカンファレンスで決定されたケアプランの目標や具体的実施方法に沿った記載が行われていることは個別ケアの実践に資する意味でも重要となる。

さて、まず何のために記録が必要かという点であるが、その意味として次の4点を挙げてみたい。

1.目標や計画に沿ったケアが行われているかというサービス実践の適正さを証拠立てるため。
2.ケアの継続性や統一性を確保するため
3.脱集団処遇の観点から個人のニーズにあった個別ケアの実践方法を見出すため
4.高品質のケアサービスを確立するための資料となるため

これらの意味に沿って記録するのであれば、その記録には「観察」「判断」「目標」「実施」「評価」が含まれる。介護保険施設においてはケアプラン作成の過程で課題や目標、その実施方法は決定されており、これに沿った内容の記載を行うことが結果的に適切な記録の方法となりうるのである。

また対人援助たるケアサービスは「利用者を見て感じることに始まり、利用者を見て感じることで終わる」といっても過言ではなく、個人のさまざまな表情や動きを観察することなしでは、利用者の変化に気づくのが遅れるばかりでなく、ケアがマンネリ・画一的・習慣的になってしまう恐れが常にある。小さな変化も見逃さず、また先入観や偏見にとらわれないで、利用者に常に関心を持ってケアにあたらねばならず、そういう視点を持った記録は、記録をとることで自らのケアの実践を自らが自然と振り返り、評価し、ケアの品質向上につながるという相乗効果も期待できる。

適切なケアとは、適切な判断基づいたケアを意味し、記録の中にはケアの内容や利用者の状態のみに留まらず、必ずそのときの判断を記入することが重要である。具体的には、目標が定まっているのであるから、それを意識しながら、
1.どのような状態に対して
2.どのように働きかけ(具体的に何をして)
3.それに対する結果は、利用者の反応も含めて(特に嫌だというような感情表現は重要である)どうだったのか。

この3点を書くことを原則としなければならない。そして結果として問題解決や行動変化につながったのかという評価も含めて「なぜそうなったのか」を分析して書くことができればベストであろう。

ケアマネージャーはモニタリングの視点とリンクさせながら上記の点を記録者に教育、指導していく必要がある。

(3.その他の業務)

T.介護認定期間の把握と更新申請等の代行手続き

ケアマネージャーは全利用者の介護認定期間を把握しておくとともに(一覧表などを作成し常に更新しておくことが重要である)、更新認定の代行申請を行い、認定期間切れという事態が生じないように努めなければならない。更新申請は認定期間の終了日の60日前から可能であることから、保険者とも事前に連絡調整した上で、申請代行手続きを行う。

なお、そのほかの申請代行業務としては、介護保険標準負担額の有効期間が切れた際の申請代行が考えられるが(入所の際に新規申請が必要な場合も考えられる)、このことについてはケアマネージャーの業務とするのか、事務職員や入所業務の担当職員等が別に行うのか、施設により違いがあろうが、このことの施設内ルールとシステムを確立しておき混乱が生じないようにしておく必要がある。

U.認定調査

介護更新認定に関わる認定調査は施設のケアマネージャーがそれを行うことを依頼される場合と、保険者の担当職員が行う場合、保険者から依頼を受けた施設外のケアマネージャーが行う場合が考えられるが、どの場合でも必要な協力を行い、適切な方法で調査が行われるようにしなければならない。

施設のケアマネージャーでない外部の調査員が認定調査を行う場合は、あらかじめ日程を調整し、ケアマネージャーや担当介護職員など日ごろの利用者の状況を詳しく知る職員が調査協力できるよう配慮する必要がある。これらの連絡調整業務も重要である。

またケアマネージャー自らが調査を行う場合は、保険者と事前に連絡調整し、その依頼に基づいて適切な日程を組んで、利用者に面接した上で確認調査を行う必要がある。調査票は記載後、できるだけ速やかに適切な方法をもって保険者に送付する。
なお認定調査に関する請求業務は、事務担当者が行う場合が多いと思えるが、調査日や調査対象者を担当者に間違いなく連絡し請求業務を行えるように施設内でルールとシステムを決めておくことが望ましい。


V.医師意見書の作成日程の調整

施設の医師が介護更新認定に必要な医師の意見書の作成するための日程調整をする業務もケアマネージャーの重要な役割である。

医師意見書の作成依頼自体は保険者から主治医師に直接行われるものであるが、施設利用者の場合は、施設の医師が主治医師であることがほとんどであり、その場合、施設内に常駐している場合は極めて少ないことから、事前に保険者とも連絡しながら、施設内で意見書を記入するのか、所属医療機関で記入するのかも含め、医師に意見書作成の期限を知らせて、作成日程を調整することにより期限内に適切な意見書作成ができる点も含めて調整することは必要であると考えられる。

W.身体拘束廃止の取り組みに関して

身体拘束の廃止については施設全体で取り組むべき課題であるが、個々の利用者の状態像とケアの実践過程で考えねばならない問題であり、ケアプランとも密接に関連していることから、ケアマネージャーが拘束廃止に向けた取り組みの中核的役割を担うことも必然といえよう。

拘束廃止の取り組みにあたっては、まず何が拘束で、何がそうでないかという判断基準を明確にせねばならず、施設内に「身体拘束廃止委員会」を立ち上げ、(委員長は施設長、各委員は各職種全体からそれぞれ選出することが望ましい)この委員会を定期的に開催し「身体拘束0への手引き」などを参考にしながら、その判断基準作りや個別のリスクマネージメントに努める必要がある。


さらに委員会において「身体拘束その他の行動制限廃止マニュアル」を作成し、事故への対応と報告のシステムを構築しておかねばならない。またマニュアルに基づいて日常の「ひやりはっと」の報告、「事故報告」の書式を整備し、それらの報告書はケアマネも含めた担当職員で内容を検討し、再発防止へ取り組む必要がある。報告書の内容によっては委員会を開催し、検討を行う必要があろうが、このことにもできればケアマネージャーが中心的な役割を担うことが望ましい。

当施設では挙げられた報告書をケアマネージャーがチェックし、個別の対応と施設長への報告で解決できる場合、全職員に内容を回覧し対応への注意を促す場合、委員会を開催し話し合う場合など、それぞれのケースの判断を行っている。また委員会では定期的に個別の利用者のリスク検討や拘束廃止に向けた取り組みの工夫の報告を行っているが、ケアマネージャーは様々な場面で工夫できる要素はないか、意識して各ユニットの責任者や担当者と話し合う機会を設けている。

なお緊急やむを得ない場合の一時的な身体拘束については


1.切迫性  2.非代替性  3.一時性 の3条件を満たす場合においてのみ家族等に説明、同意を得て可能であるが、この説明同意を得る担当職員については、誰がその役割を担うかあらかじめ決めておく必要がある。(ケアマネージャー又はソーシャルワーカーが考えられる)

なお、やむを得ない状況で身体拘束を行った場合は、その状況等について施設介護経過(支援経過)に必ず記載しておく必要がある。

(4.おわりに)

今回、施設のケアマネージャーの役割と、その業務内容について、施設内のケアマネジメントという視点を中心に考えてみた。そのため内容はケアプランの作成や評価という点が中心になってしまったが、実際の施設内の業務においてはこれ以外にもさまざまな業務が考えられであろうし、兼務する業務に実際には大きく時間が割かれているような事態があるかもしれない。また相談員との業務分掌の難しさも感じている場合があるかもしれない。

しかしケアマネージャーはケアプランを単に立案するケアプランナーではなく、生活者たる利用者の暮らしをよりよくするための援助者として個別ケアの視点に立ったケアマネジメントを展開する社会福祉援助者なのであり、ソーシャルケースワークの知識や技術をも併せ持って、施設内の各職種との連携の要の役割をもって業務に当たる必要性がますます求められてこよう。そうした意味では専任でケアマネージャー業務に就く職員も増えてこようし、その中で今回のまとめが施設のケアマネージャーのルーチンワークを構築する上で、参考資料となることを願うものである。

なお今回、内容については充分な推敲を行っていない状況であり、今後、皆様から寄せられた意見を参考にしながら加筆、訂正を加えたい。


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